詩性

詩とは無責任なものだ。
現実のさまざまな問題とはかけ離れた視座から、
環境の「美しさ」のみが抽出され、詩的世界に置かれる。

現実の世界を反映しない、その抽出された美は、
現実のなかに住む、われわれの眼を開かせる。
われわれを非日常の世界へと誘い、入り込ませる。

一瞬かもしれないが、人間の精神を、しがらみのなかから開放する。

これが詩の力だ。
詩とは無責任であるべくして無責任であるべきだ。

近世の旅人にとっては、いかに世界は詩の世界で満たされていたか。
名所めぐりとは、詩的世界との濃密な遭遇であっただろう。
そしてそれがいかに豊かなことであったか。と、羨ましく思う。

無責任がいけないからといって、現実の風景にばかり気をとられていると
息苦しくなる。
たまには無責任な詩人であるべきだろう。

  

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