計画論と研究 その1

今、社会で求められる計画論について考えてみる。

他分野の人と飲みに行ったりすると、よく聞かれるのは、
「どんな研究の方法論を用いている?」ということで、
そういうときには、

既存の都市形成史分野の研究の方法論に基づいて、
都市形成のメカニズムについての質的評価を、
分厚い記述や未発見の資料を用いて行うこと。

と答えるようにしている。
次に来る質問は、私は計画系に所属しているということで、
「景観の計画とかデザインの方法論にはどのようなものがある?」
というもので、
もちろん橋・構造物、川、道、広場などその対象によって考え方も異なるし、
モノの見えや形、合意形成、歴史性の重視など、その人の視点や場所の特性によっても
異なる。そのあたりをざっと説明するのであるが、
では「歴史を活かしたまちづくり、風景づくり」というのは、なんぞや、と改める機会にもなる。

歴史的町並み整備、土木遺産の復元・活用というと話は早い。
対象が明確だからである。モノをつくる方法論を議論すればほぼクリア。

だが例えば、道づくり。
道なんて、「道を舗装」すれば終わりなんて訳にはいかない。
道はあくまで主役ではなく、主役は沿道のモノ、であり、沿道の住民の生活であったりする。
結局は道を基軸にした○○つくりなのである。

そうするとやるべき事が山ほど出てくる。何でも屋さんになる必要も出てくる。
「歴史を活かしたまちづくり」の活かし方といっても、その地域の何が資源として使えるか
による。そうするとやはり個別事例が気になる。
  
 
ハーバード・ビジネススクールは、ケースメソッドを用いた授業スタイルで有名だそうだが
(久保田先生に聞いた)、ケースメソッドでは、現象から概念を読み取るだけではなく、
具体的な事案に対する実践的判断から他の事案にも適用可能な論理を抽出することが
重視されるのだそうだ。
ちなみにその分野の博士課程では、ケースと呼ばれる教材の作成、事例研究論文の作成
が主な仕事となるようである。

そう考えると、景観系の研究室で、安易に使いこなせないモデルに走らず、事例を丹念に
精査するという方法論は一つの方向性として悪くないと思う。
ただ、それとケースメソッドと割り切って行っている他分野のように、割り切った上での
方法論の構築・洗練を目指すべきだという「自覚」もしくは「アピール」ができていないような
気がする。
 
 (つづく)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です