ストーリーづくり

 
近年,文化財行政は保存から活用へ,まちづくり行政も歴史資源の再生と活用へ,
という大きな流れがあり,文化財行政を越えた歴史文化資源のマネジメントが
大きな課題になっているといってよい.

また,その資源も,世界遺産レベルのものから,市民遺産レベルのものまで広がりがある.

そこで重要視されているのが地域の歴史文化のなかの「ストーリー」である.
地域に潜在する資源群を一連の卓越した(しかも分かりやすい)ストーリーを
探り出し,そこに乗せて資源群を理解し,体系的な施策を打とうとする動きは,
近年強くなる傾向にある.

たとえば,僕も関わっている京都南部の宇治茶生産地域では,
お茶のふるさとという大きなストーリーのもと,文化的景観の保全と,
茶業振興による地域振興が一体的に目指されている.
同じく部分的に関わっている,琵琶湖の水辺景観も同様だ.
日本遺産は観光が主目的だが,地域を包含するストーリーが重視されている。

今,地域づくりの現場では,地域に潜在するストーリーを発掘し,
それを学術的裏付けをもって際立たせて,さらには地域振興として
ストーリーに基づいた地域文化の再生を実施すること,
これらの一連のマネジメントのノウハウが求められている.
そして,ここに都市空間・景観の意味の読み取りや,都市・景観のデザイン
などが深く関わってくるし,専門性としても求められている.

こうしたことは,都市・景観のデザインを専門とする者は元来やってきた
ことではある.そういう意味では,ようやく社会に求められる時代になってきた
ということだが,それでもまだまだ世間一般としてこういった専門性が認知され
ているとはいえない.
こうした時代の空気をしっかりつかみ,しっかりとした手法論やアウトプットを
出せるかどうか,が今後の都市・景観デザインの職能の確立を左右するといっても
過言ではないだろう.

(補足)こういう道を目指す若い人に言いたいのは,
研究を通じた精度高い現象の読み解きと,精緻なロジックの組み立てが
そもそも出来るレベルに達していないと実務ではしんどい,ということだ.
実際,研究におけるテーマ設定,コンセプトの組み立てと論証に求められる能力と,
地域づくりで求められるストーリーの読み解きと組み立てを主とする能力は,
かなりの点で共通すると思う.なので,しっかり研究に励んでください.

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