第9回 文化的景観研究集会

奈良文化財研究所主催 第9回文化的景観研究集会
「地域らしさを支える土木―文化的景観における公共事業の整え方―」
プログラム
(平成29年12月9日(土),於京都府立大学・大学会館(9日)
       10日(日),滋賀県東近江市と近江八幡市(10日))
に参加し,講演と,パネルディスカッションのコーディネーターを務めました。
(実際には企画時から関わらせていただきました)

File-2017-12-10-16-27-12-e1513170443171まず,今回の研究集会のテーマ「地域らしさを支える土木―文化的景観における公共事業の整え方―」について,各自治体へのヒアリング調査やアンケート調査をもとに,現状の実態把握,論点と課題の整理,具体的な改善方策,について話題提供しました。なかなか面白い調査結果が出て参りました。その詳細は,追って論文等にて発表いたします。

 

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(スタッフである奈文研の本間さんのfacebookもご参照ください。) 
 
ディスカッションは,西山先生のコメントと問題提起からスタートしました。
その後の議論は,私の記憶の限りにおいて,以下のような論点が出されました。

・公共事業を「整える」とはどういうことか。「整備」とは異なる。
・そもそも文化的景観とは何のための制度か,ということ。通常の文化財保存とは異なる。
・常に,その地域にとって何のための整備か?を考える。
・公共事業の背景には地域づくりがある。その地域づくりを文化的景観という見方をもって行うことは有効。
・その見方を以て公共事業「も」協議していく仕組みを作ること,そのなかで「固有解」を見出すこと。
・「固有解を見出す」ためにはガイドラインを参照すればよいというようなものではなく,しっかりと考えることが必要。文化的景観という見方はそもそも多面的なもの,深いものであり,いろいろな専門家の視点が不可欠。時間と手間が必要。
・「線を引く」(計画する,設計する)前の段階で,どう協議するか。
・地元のニーズを知る。住民の目線になり,住民の感覚を尊重する。
・土木のインフラはしばしばオーバースペックになる。過剰にならないようにすること。
・本当にその規模で良いのか。地元ニーズを的確に捉えることが重要。その上での協議でなければならない。
・アドバイザーの役割は大きい。事業検討前から施工時まで。技術や工法もふまえて,技術的課題とそれを乗り越える術を考え提案できるのは土木技術の知見を有したアドバイザー。
・アドバイザーにも限界があり,原案の改善や誘導はできるが,実際には,手を動かす(業務としてやる)側に実力ある人材が必要。長期的にもそういう人を育てないといけない。
・場所に応じて条件も違う,背負っている文化も違う。しっかり読み解いて,丁寧につくる。そのための時間,場をつくること(=協議システム)が大切。
・重文景選定は「考える」ためのいい機会である。しっかり考えたら,あとは「進める」勇気を持つこと。

などです。
時間が限られるなか,会場におられるみなさまのお力を借りて,実り多いディスカッションが出来ました。
ありがとうございました。
 
  
 
翌10日(日)のエクスカーション@滋賀県東近江市と近江八幡市では,
参加者の皆様を伊庭にご案内し,調査成果の概要を報告させていただきました。
論点としては,
・伊庭の固有性をどこに見出すか?(他との違いをどう説明するか)
・自然と人の関わり,その変化と持続をどう評価するか?
をあげ,実見では,
水路の構造,道の構造,敷地割,敷地のプラン,カワトなどの水利用施設,屋敷畑,農道具置き場,イケス,ジフン,家の間取り,などに着目して町を歩きました。

ディスカッションでは,
広域の水システム,自然条件とそのなかでの人間の営みについて,
村の基盤となる信仰を核としたコミュニティのありかたについて,
今後の保全計画のありかたや,地元住民の役割,などが議論されました。
地域のアイデンティティをあらわす地域づくりのストーリーを,次世代の住民と共有できるかどうか。
という,今後の宿題をいただきました。

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実見で偶然訪ねた浦川沿いのお宅 ジフンが湧いており,イケスやフナ寿司用の桶があります。

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