水とともに暮らす

デヴィッド・ワゴナー氏の来日にあたり、講演会を開催しました。

講演会では多くの事例を取り上げていただき、一つ一つの事例について、気候変動下の治水上の課題、まちづくりの課題、それを解決する水システムを丁寧に解説いただき、さらにはそれを空間として統合し、住環境や地域価値の向上を目指すための「デザイン」の役割について解説していただきました。

このような水を扱う都市デザインのアプローチは、日本ではまだ定着していませんが、米国南東部のようなハリケーン常襲地帯では深刻な洪水被害が既にあり、今後さらに被害が大きくなる予測があるため喫緊の課題です。Davidさんのアプローチは、気候変動下において土地利用やインフラを再最適化することを目指す、まさに世界最先端の都市デザインのアプローチであり、これからの日本において導入すべき視点・技術であることに間違いありません。今回の講演会でも、国土交通省から数名の実務家のご参加もあり、これからの日本における治水施策と都市計画・まちづくり(広義の都市デザイン)の融合を考える重要な機会となったと思います。

水の流れは、川の上流・中流・下流、下水道、堤防、地下水、ポンプ、防潮堤、道路、水路・・・と、複雑な関係の上に成り立っており、かつ、管理は複数の管理者にまたがっています。要素や課題が複雑に関係し合っている場合、それをシステムとして解決できるかどうかは、実際に検討してみないと分かりません。さらには、それが地価の向上を含む地域再生にどれほど貢献するか、も同様です。そのための挑戦に向けて、デザイナーとエンジニアが組んで、これにきちんと対価を払って、開かれた場で議論する。実装のための計画を立案し可能性を検討する。不動産市場に訴えかける。これを言うのは簡単ですが、実際にお金を出して行うのは難しい。そこにはデザインという行為やデザイナーに対する社会への信頼が不可欠です。

そして「表現しなければ伝わらない」。制度にがんじがらめになってあきらめるのではなく、どうするのが社会にとってベストなのか。一度、形にしてみなければ深く考える事も出来ません。思考実験を形にして、世の中に働きかける。「あきらめない。できることからやる。」
Davidさんから激励を受けました。

さて、事前の打ち合わせでの率直な意見交換、講演会に先立っての専門家会議での意見交換、そして貴重な講演とその後のディスカッション、懇親会と、私個人にとっていろいろな会話がとても勉強になりました。研究室では学生さんと研究を始めたところで、デヴィッドさんが策定された計画の研究も進めていたのですが、まさか自分がこの米国最先端の実務者を招聘し、講演会を企画できるとは思ってもみませんでした。研究者として、専門家として、大きな刺激を受けました。引き合わせてくれた教え子でもある三輪君に感謝です。

日本でも一つの潮流をつくるべく、今後とも治水とデザインのあり方を追求していきたいと思います。

なお、今回のレクチャーの資料(200ページ以上)については、あくまで非公開ですが、既に公開している似た資料を紹介します。解説がないとよく分からないとは思いますが。。。
https://www.itrcweb.org/Documents/2017-Meeting/Living-With-Water.pdf(Interstate Technology & Regulatory Council Annual Meeting 2017の基調講演資料より)

(以下、記録用案内)

Living with Water―「水とともに暮らす」都市ビジョンにみる流域治水と災害復興の未来:ニューオーリンズ復興の現場から(案内PDF

●● 趣旨
ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズの復興都市計画の策定において主導的な役割を果たしたデヴィッド・ワゴナー氏の来日にあたり,講演会を行います.デヴィッド氏には「水とともに暮らす」都市ビジョンのありかた,計画スキーム,それを支える技術等について話題提供いただきます.さらに討議では,インフラ・デザイン,流域空間計画,都市復興の観点から,その計画思想を読み解きつつ,これからの日本におけるレジリエントな都市のデザイン,復興デザインの可能性について,参加者の方々とともに考える機会とします.

●● 開催要領
日時  2019年8月27日(火)18時00分〜20時30分頃まで(17時30分開場)
場所  関西大学梅田キャンパス KANDAI Me RISE 4階 多目的室
主催  公益社団法人 日本都市計画学会関西支部
共催  関西大学社会安全学部・環境都市工学部,京都大学社会基盤工学専攻景観設計学分野
内容 
18:00 開会(17:30 開場 )
18:05 デヴィッド・ワゴナー氏のご紹介
18:10 講演 「不確実性を受け容れて ー水とともに暮らす」 Embracing Uncertainty ―Living with Water」
講演者:デヴィッド・ワゴナー氏(WAGGONNER & BALL 代表)
19:30 パネル・ディスカッション ーインフラ・流域空間・復興をデザインする     
討議者:ワゴナー氏,山口敬太(京都大学准教授),武田史朗(立命館大学教授),越山健治(関西大学教授,復興検証・知識継承特別委員会委員長)
20:30 閉会 (閉会後,同会場にて懇親会の開催を予定しております)

●● デヴィッド・ワゴナー氏 プロフィール DAVID WAGGONNER
(WAGGONNER & BALL 代表) デヴィッド氏は,ニューオリンズを拠点する建築・計画事務所WAGGONNER&BALLの代表であり,アメリカ建築家協会(FAIA)フェロー(2010年)である.2005年のハリケーン・カトリーナによる被災後のニューオーリンズの復興において,「水」を取り入れた持続可能な都市デザインの実践に従事し,歴史,土壌,生物多様性,インフラストラクチャー・ネットワーク,水を活用した都市空間・居住空間のあり方に関する検討を進め,オランダの技術者との協働を経て,グレイト・ニューオーリンズ・アーバンウォータープランの策定を主導した.現在も複数の事業化に携わっている.この経験が活かされて2012年のハリケーン・サンディ後に”REBUILD BY DESIGN”プロジェクトが生み出されるなど,北米における災害復興・都市デザインのありかたを大きく変える契機となった. https://livingwithwater.com/blog/urban_water_plan/about/

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