地域景観計画の可能性

昨日、「地域景観まちづくりの理論と実践」に参加した。
僕も参加している佐々木葉先生が代表の科研グループの報告会でもある。
記憶が残るうちに、このセミナーで感じたことを備忘録として残しておく。

ただ、出てきたトピックは膨大でかつ深いのでごく一部についてのコメントになる。

まず、恵那などでの研究者や関係実務者らの取り組みを通じて、
「地域景観の計画」という計画論的枠組みの見通しがよくなった。
そのスキームの特徴は、創発に基づく”連鎖・波及型の計画論”といえよう。
また、ゴールなきオープンエンドのまちづくり活動であることが特徴で、
そこでは目指すべき”ヴィジョン”が仮のゴールとなる。
さらには、たとえばヴィジョンをつくるプロセス、など、その活動の
”プロセス”こそが重要で、その中で関係構築があり、活動の広がりや、
気づき・発見があり、哲学の深化へとつながっていく。

もう少し、フィジカルな面をみれば、本庄の「まちづくろい」という
キーワードにみるように、環境構築型ではなく、修築・再編型の計画という特徴もある。
平野さんの「複数の小さな事業の相乗効果のデザイン」という表現をかりると、
小さな修築・再編の相乗効果、とも言えるであろう。

あと、原動力は「愛」(笑)。
「愛」を前面に出すと運動論じゃないかという批判があるなかで、
計画論としてはそれを真正面からとりかかる必要もでてきたのかもしれない。
ロマン主義的計画論?

以上がごく簡単な自分流のまとめだ。既存の”まちづくり論”との差異化は
課題として残るが、計画体系としてはそれほど困難無くまとめられそうだ。
 
 
さて、以下は自分が考えたこと、ディスカッションノート。

目下、「地域景観計画」の目標は、計画論としての体系化であろう。
少なくとも僕は強い関心を持つ。

まず、既存の景観論の体系である「操作的景観論」をどう超えるか、について、
アップデートで可能なのか、新たな枠組みが必要なのか、
各研究者が景観原論まで掘り下げて考えているところであろう。

議論のなかで、計画にゴールがないというのは大変ですね、
という佐々木邦先生のコメントが出たが、だからこそ原論が必要で、
それに基づいたヴィジョンこそが仮のゴールになる。
ヴィジョンをつくることが計画のなかに組み込まれている。

計画体系については、葉先生のまとめが整理されていて明快であった。
「地域 × 眺め × 暮らし・身近な 
 × ビジョン・マネジメント・形成・まちづくり」
というまとめだ。これはひとつのフレームとなる可能性がある。
(実際、葉先生はこのフレームの中で原論-計画論-デザイン論を体系づけて実践しておられる)

このフレームと山については、各研究者がそれぞれの現場で悩みながら
構築しようとしているのではないか。議論をたたかわせて景観原論が成熟してくれば、
そこからまた様々な計画論・デザイン論が立ち上がってくるだろう。
最初は小さな山が乱立する状況になるかもしれないが、それが大きな山になり得るかが重要だろう。
そのためには、それを実践するフィールド(現場)があり続けられるかどうか。
そして、最終的には、計画論として、自治体に受け入れられるかどうか。
恵那のような事例が増えてほしいし、モデルになってほしいと強く願う。

 
で、「地域計画計画」における問題意識として共有されつつあるのが、
「地域を/地域の暮らしを/地域の人をどう捉えるか」だ。

景観論として平野さんのいうような「人の認識メカニズム」のモデル化を
ベースとするというのは理想だが、「地域をどう捉えるか」ということを考えると、
現象が複雑すぎて、なかなか「使える」レベルに到達できない。(もどかしい)

地域の構造は、フィジカルな環境と認識構造との相互関係で決まってくる。
おそらく、「認識構造として分かっていること」と「使える道具」のハイブリッドな
融合が重要なのであろう。ただし、その違いをきちんと理解して、意識的に
仕分ける必要がある(by平野)。

そこさえ踏まえれば、「場」の認識構造に基づきつつ、また原論に基づきつつ、
こういった「場」の群を空間的に編集・構成するといったデザイン&フィードバックの
アプローチも可能だろう。
そして連鎖と波及を適切に評価する。

僕の私見では、「場」の理解に基づいた上での、「場」同士のリンクとネットワーク
が地域景観計画の肝になると思っている。計画対象は場と「道」だ。
個人的に場の問題を引き続き考えたい。

今回のセミナーを通じて、
人-暮らし-地域の体系の中の「場」を取り上げてしっかりした原論を構築し
地域景観計画へと発展させることができれば、「日本的景観理論(by羽藤)」
というものが、生まれてくるのではないか、と、秘かに可能性を感じた。

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