黒川温泉にみる造景の知恵

M1の寺島君と黒川温泉の公共空間における修景の経過と技法について調べています。
ここには全国のモデルになり得る、さまざまな知恵が隠されていると考えています。
先日、黒川温泉で寺島君と勉強会に参加し、成果の中間発表をしました【研究室ブログ】。

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さて、僕がはじめて黒川温泉に来たのは2004年で、景観の勉強をしはじめた頃でした。
このときは南小国町で3泊しました。当時の僕は「渓流沿い露天風呂」に夢中で、
山みず木」さんをはじめとする黒川温泉の露天風呂や「藤もと」さんの露天風呂に
どうしても行きたかったのです。その後も全国の渓流沿い露天風呂は結構まわりました。
黒川にも何度か来ました。

そもそも、そういう趣味!?をもったきっかけは、
1999年(大学1年)のボラカイ島旅行と、1999年、2000年のバリ島・ウブドのリゾート体験がきっかけです。
ボラカイ島は今では有名ですが、当時はバックパッカーしか知らない秘境だったようで、
マニラで1泊して飛行機を乗り継いで、長距離バス+舟でしか行けないとても不便な場所でした。旅行者もバックパッカーが多くて、ビーチ沿いのレストランやお店の雰囲気が手作り感があって、アットホームで最高でした。いまはどうなんだろう。
同じく、文化芸術の村であるウブドもまだあまり観光化が進んでおらず、まだ素朴な農村の雰囲気がありました。
そこで、はじめて泊まったコマネカリゾートのインパクトが大きかったですね。


あと、泊まってはいないけど、チェディとか、イダなんかの景観デザインに
強烈な憧憬を抱いたんですよね。
思えば、この道を目指す重要なきっかけの一つだったと思います。

日本でも、と思って知ったのが、黒川温泉でした。
それから十数年たっていますが、何度か訪れ、その景観づくりの技法の巧さが
理解できるようになったので、ぜひ研究したいと思っていました。まずは公共空間を、と。
旅館の庭は、京都の寺院・別荘の庭や露地と似ている部分もありますが、やはり違いますね。
雑木の庭なので、古典的・伝統的ではなく、近代的な自然観による、自然風のよさがあります。
視覚だけでなく、体全体で味わうのも特徴のひとつ。
黒川では旅館の敷地に閉じずに温泉街に自然がにじみ出しています。

たとえば、ということで、旅館 山河さんの庭を紹介します。
この雑木による造景の考え方は、黒川全体の造景の考え方をよくあらわしています。
詳しくは論文を乞うご期待。

(写真はクリックすると高解像度のものになります)

この木々が、ここ四半世紀にすべて人の手で植えられたもの、だなんて信じられますか?
一度その空間を体験すると、にわかには信じられません。
昔の写真をみせていただくと、確かに庭がない・・・。昔は杉しかなかったそうです。
敷地のなかを流れる遣水も、昔はコンクリート張りの水路だったそうで。

ご主人は、このお方↓。インタビュー、すごく面白いのでおすすめです。
http://www.obt-a.net/web_jinzai_magazine/person/2007/10/post-31.html

日本という風土での風景づくりの可能性をすごく感じます。

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