『風土自治』を読んで

久しぶりの更新です。中村良夫先生からご恵贈たまわった『風土自治』の感想を書きます。

『風土自治 ― 内発的まちづくりとは何か』中村良夫著
https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865783094.html

まず本書は,風土という視点から,まちづくりに理論的基盤を与えるものとして非常に重要な,記念碑的書籍であると考えています。また,全編通じて含蓄に富んだ言説にあふれ,学ぶことが多い一級の都市文化論でもあります。風景・風土からまちづくりを考える者にとっては必読の名著ですね。

なかでも,和辻風土論の気候・気象・地味・地形・景観などのさまざまな言葉や表現(すなわち風物)によって媒介される間柄,さらには結縁という論立てがなされていますが,これは万人に通じるという意味で普遍的であり,和辻先生・ベルク先生による風土の存在論的説明がまちづくりの根本原理として,とても腑に落ちました。
(ベルク先生の近著を読んでいれば,なお理解が深まるかと思います。)
そして,自然観から信仰,文芸,芸能,年中行事と歳時記,遊び,これらを通じた社交や社会的結縁の連続が,風土を形づくってきた伝統が,非常に説得力をもって理解されました。風土によるまちづくりの可能性,風物研究の地平を大きく開くもの,と思います。

しかも学生時代から親しんできた中村先生の風景論を基盤としているところもミソで,これまでの豊富な蓄積が和辻風土論の視座を得て,創造的に再構造化されたといえますが,その論の切れ味には驚くばかりです。
私の今の関心や,今行っている実践にも直接関わることが多く,これを継承して育て,発展させなければ,と思います。(勝手に)使命を感じます。

これから,あらためて参考文献に挙げられた文献のほか,文芸史,芸能史,民俗宗教と社会史,結衆・結社の歴史に関する文献や,遊楽図や風俗画などの資料を渉猟し,本書の理解を深めたいと思います。古書を中心に,新たに百冊近くの図書を求め,本棚が充実しました。風土史の森を前に,わくわくしています。
そんなこともあり,今年は後期の大学院講義の内容を「『風土自治』を読む」とし,関連文献を読み込んで,理解を深めることを,自らに課すことにしました。

中村先生には学生時代に直接ご指導いただいた訳ではありませんが,その後,折りにつけご指導いただいています。(時々メールもやりとりさせていただいております)
かけがえのない学縁,とてもうれしく思います。

特に重要だと感じた【要点】を示しておきます。
本書を読むきっかけの一つになればと思います。

●風土の系譜 ー遊びと結縁
 階級を超えて、民衆の間に巻き起こる雅俗不二の遊び・風流
 祭礼・年中行事・文芸・芸能・盛り場の食と酒宴、風俗・風習
 中世芸能史(勧進や寄合,草庵や郷村で開花した諸芸能,猿楽能はじめ,茶花香の
       室内芸能や作庭・狂言・連歌等に及ぶ遊びの世界)
 近世芸能史(歌舞伎・人形浄瑠璃・遊芸・謡・祭礼芸能)と盛り場
 大衆的な人間の結びつき・結縁

●風土共同体と風土のなかの身体と社会
 中世・近世の結衆・結社(座、門徒、講、連)
 民俗宗教・芸能、祝祭・遊び・社交と情緒的共同体の形成
 年中行事・歳時記にみる風土性と儀礼を担う社会
 文芸:言葉・詩魂による表現、その享受と創造(詩歌の世界)
 風土化された人間の身体 → 風土共同体の形成

●風土の理論 ー和辻「風土」の解釈、間柄と風物
 風土を共有する「間柄的人間」−人と人の関係・「結縁」
 時間 − 歴史性
 空間 − 場所性

●人−自然(天/地)の関係性
 山水とニハ、間と縁
 風土との戯れ、風景との交絡・交情

●社会−自然(天/地)の関係性
 「風土的形象」であり、社会化されたコードとしての風物
 絵画系・言語系の表象性 −伝統の継承と創造
 風土の循環と社会の再生産、翠点としての神社
 風土公共圏(風土の内にある関係の網)