私の原点
2/21の十三未来会議で話をするために、あれこれ考えていました。
十三では「淀壁」という壁画アートの、とてもクオリティが高い魅力的なプロジェクトが進行中です。
https://www.yodokabe.net

それをみてたら、ふと、昔のことを思い出しました。
私が研究室に入る前、大学3回生のときにアート系のワークキャンプに参加し、トルコの田舎町で壁画をたくさん描いたことです。
今思えば、あれは私にとっての地域づくりの原体験であったと思います。
もともと、バックパーカーとしていろいろな国や町に訪れることが趣味だったのですが、できるだけ長期間いたいが、そんなお金もないということで、いろいろ考えたり探した末、大学の夏休み期間中に、宿泊費を全部出してくれる国際ワークキャンプ(ボランティア)に参加してみることにしました。
いろいろ調べて、アートでまちづくりというテーマに興味を持って申し込みました。絵や写真の作品の審査があったんですが、趣味では描いていたものを出したら通過し、参加できることになりました。他の参加者の多くは美大の学生でした。
場所はトルコ中部のTaşköprüという田舎町、期間は2週間(前後含めて3週間)。ミッションは、ニンニク生産が主産業の地域におけるガーリック・フェスティバルというイベントを、アートで盛り上げること、でした。
初めてトルコの地を訪れ、15人の仲間と出会い、本当に創造的で楽しい日々を過ごしました。ここでの経験が、自分の人間形成に与えた影響は計り知れません。
特に、当時駆け出しの映画監督のキャンプリーダー・セルダー(今は美大の教授)や、一番仲が良くした一歳年下の駆け出しのフランス人画家のガブリエル(今はプロのストリート・アーティスト)との出会いは、僕の生き方や人格まで変えたといっても過言ではありません。
というのも、彼らは好きなもの、自分の才覚一つで食っていく覚悟を、若くして既に決めていました。彼らの生き様や覚悟に触れたのが、自分も自分の腕一本で生きていくことを決断するのに大きな後押しになったと考えています。

一方、農村の暮らしの経済的困難、教育格差の問題などにも、心を揺さぶられ、地域づくりの問題への関心を大きくしました。自分が地域の人々に対して何ができるのかを考えるようになり、日本への帰国後も(研究室配属以前で)、気のままに、日本の中山間地域や農村地域がより豊かになるためには、どんな戦略が必要かをノートに書いたりしていました。
研究室配属後は、景観というテーマを主題としたので、地域づくりは直接の研究対象とはしませんでしたが、修士課程在学時のスイス留学中や大学院学生時代には、フランスやイタリアなどの小規模な集落・地域をいろいろみてまわり、エコツアーに参加し、地域を豊かに、魅力的にする方策など、勉強を続けていきました。
最近になってようやく、地域づくりの実践にも取り組む機会をいただくようになり、研究としても本格的にとりかかるようになりました。遅ればせながらのスタート、ですが、人は十年集中して取り組めばその道の大家になれますので、人生の残り時間でも、まだ間に合うはずです。
というわけで私にとっては懐かしい、想い出話でした。



写真左から:タスコプルの路上マーケットでのニンニク売りのおばあちゃん、子どもに絵を教えるワークショップ、レンガで屋外アート作品づくり(すべて山口が撮影)