文化の有形/無形とアイデンティティ

[付記2016.6.10]
あらためて考えると、僕が歴史研究のテーマを設定するときに基準としている事は、
まちや人(市民、都市デザイナー)のアイデンティティや価値・規範形成に貢献するかどうか、だ。
その貢献が大きいほどよい(むしろ方法論以上に)と考えている。

——付記、以上——

欧米では町の景観そのものが,非常にアイコニックで,歴史をまさに体現するような町が
確かに数多く存在する.景観がコミュニティの,そして地域の強固なアイデンティティと
なっていることが明確だ.

翻って日本では.人々がまちの姿=景観を,どこまでアイデンティティとして
捉えているのだろうか,とあらためて考えてみると,なかなか,こころもとない.
もちろんそうした町もあるが,一般的にアイデンティティの源泉となっているのは
有形の資源ではなく,無形の文化ではないかと思う.

言葉,料理,社会的慣習,産業,祭礼,芸能,地域内活動・・・
そして,地域で語り継がれている物語,ふるさとの記憶・イメージ・・・
(ときにステレオタイプなイメージもあるが)

無形の物語の束のなかに,景観も含めて有形の資源がピースというか,
断片的語り部として存在しているというのが実感に近い.

もちろん,まちの顔が劇的に変わることで,自分たちの町に対する認識が
一変する,ということもあり,有形要素の影響が大きいことも事実だろう.

“計画行為は人々が感じるアイデンティティに強い影響を及ぼす”
“計画行為は開発行為そのものではなく,場所の物理的な変化を左右するガバナンスの基盤と見なすべきである”(パッツィ・ヒーリー『メイキング・ベター・プレイス』)

地域づくりにおいて,地域の人々のアイデンティティのもちかたを探ること
はきわめて重要だ.そこを出発点として地域空間の計画論を立てると
いかなる体系が浮かびあがるだろうか...ということをしばらく考えてみたい.

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