景観・デザイン委員会20周年記念シンポジウム
土木学会 景観・デザイン委員会20周年記念シンポジウム
「景観・デザインは日本を救うか? -都市・地域の再生に向けて」
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(平成29年12月1日(金) 10:40-18:00 於京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホール)に開催校幹事として,また企画者としても関わらせていただきました。
中村先生の格調高く創造性溢れる基調講演,シンポジウムのパネリストの方々のご発表とご意見に救われて,盛況のうちに終えることができました。
中村先生は,景観/風景の捉え方を相対化され,風景は風土をいくつかの方法により読み取った成果であること,さらに風土の断片である身近な「風物」のなかに,風土生成の手がかりがあることを論じられました。そして,風土の理論が,景観問題とコミュニテイ再生を同時に扱える点にその重要性があることを強調されました。中村先生によれば,これは和辻理論の措定する「間柄的人間」が個人/社会の二重性を持っているからである,といいます。つまり,個人-社会ー自然を総括的に捉えるためには,風土という視点が理論的基盤になる,ということです。
われわれ景観研究者にとって,今後少なくとも10-20年は考え続けなければならない宿題をいただきました。
午後からのシンポジウムでは,
第1部【景観・デザインを問い直す:「行政・実務者・学識者に聞く社会課題と専門知の役割」調査報告を通じて」において,西村さんから,インタビューの成果をもとに,さまざまな立場の方々からみた景観・デザインの領域の今とこれからを切り開く重要な論点と方向性に関するご報告をいただきました。
第2部では,まさに領域が拡張しつつある公共空間の「デザイン」について,福島さんからこれまでの土木分野のデザインの成果の整理と,長谷川さん,星野さんのそれぞれの方法や考え方について議論が展開されました。とても示唆に富んだ話題提供とディスカッションが展開されました。
第3部では,景観学を政策に位置づける,もしくは政策として展開するための概念や論点が出されました。それぞれのご経験をふまえたリアリティのあるプレゼンが展開されました。ディスカッションは時間不足で,あまり議論を深めることができませんでしたが,重要な論点が出されました。
コーディネータの(私の)意図としては,事業ベースの公共デザインも景観政策も土地利用政策として考える必要があり,そのためのエリアの「網掛け」とその根拠となる価値付け,エリアのデザインを考えるための戦略実装の制度化,運動論としての展開,などについて議論しようと考えていましたが,そこまで至らず。ぜひ書籍化を目指してカバーしたいと思います。
1年ほど準備してきて,特に福島さんとは,膨大な議論を重ねてきました。
シンポジウムの時間内にその成果をうまく出し切ることができなかったのは正直残念ですが,
着実に自分たちの糧になりましたし,議論しながら,次にやるべき事がかなり明確になりました。
西村さんともども,是非書籍化を進め,議論の成果をしっかり形にしたいと思います。