京都三条通デザインワークショップ
今年の8月から4日間実施された三条通デザイン・ワークショップですが、11月末に成果発表会+シンポジウムが開催され、一区切りつきました。その成果物もウェブサイト上で公開されました。以下のページからご覧ください。
https://kyotosanjyo.wordpress.com
地域の皆様、講師や実行委員会のみなさまのほか、お世話になった皆様、本当にありがとうございました。
今一度、この取り組みを振り返っておきたいと思います。
取り組みのきっかけ
この取り組みの背景として、京の三条まちづくり協議会の活動範囲である三条通の寺町〜新町が、電線地中化・無電柱化の第7期計画の早期着手道路に選定されたことがあります。
地上機器の設置等、協議調整が進められているなか、みちづくり・まちづくりの将来像を具体化する必要がありました。
これまで、京の三条まちづくり協議会では、京都文化博物館との地域共働事業として、「まちカフェ」などのさまざまな勉強会を開催されておられました。
今年度については、特に「みちづくり」に焦点を当てた、勉強会やワークショップを行おうと話しが進んでおりました。
2020年1月には私の方で、まちカフェで講演を開催させて頂きましたが、それをきっかけに、市民を巻き込んだみちづくりの進め方について意見交換を重ねました。ブリュッセルの道路空間再編で市民NPOがアイデアコンペを実施した例があり、当初は、そのような方法でまちづくりやみちづくりの可能性を開き、デザインの具体的検討を進め、市民の気運を高めるということができるのでは、と相談しておりました。
しかしながら新型コロナウイルスの感染拡大もあり、不特定多数の人数が三条に出入りするリスクも考慮し、今回の公募でのワークショップ形式をとることになりました。
本ワークショップの特色
このワークショップがほかと違うのは、三条まちづくり協議会メンバー・京都エリマネメンバーがメンターとなって、公募メンバーである学生・U30社会人と混成のチーム体制で、検討を進めてきたことです。
コミュニケーション、コラボレーション、コ・クリエーションのコ・デザインの取り組み、と捉えています。近年のパリの取り組みを参考にしました。
これまで三条では、住民と専門家、すなわち建築士会やエリマネ、景観フォーラムとの協働の長い実績と豊富な経験がありました。これが基盤となったわけです。
プログラムとしては、中長期での実現を想定して、実現可能な道路空間活用とまちづくりのアイデアを検討するために、レクチャーとワークを組みました。
なかでも、「シーンから考える」ということから始め、そのシーンを実現する空間活用可能性のリサーチをふまえ、シーンを実現・持続する仕組みを検討し、みちのデザインと景観の将来像を考えるということを課題としました。
単なる妄想アイデア=絵に描いた餅ではダメということです。また、まちの特性、歴史性、これまでの活動経緯などをふまえて考える。それを教えてくれるのがメンターさんたちです。
非常に多くの情報をインプットした上で、まちづくりの将来ビジョンから、ハードのデザインと、プログラム、実現の仕組みまでを考えるという、ハードルの高いワークショップになりましたが、結果的に、参加者のみなさんはそれに見事こたえてくれました。
これから三条の協議会主催の検討会議も経て、みちの将来像を固めていくことにありますが、その際の論点のかなりの部分がこのワークショップで浮かび上がったと思います。
三条通のビジョンへ
さて、これからは、①短期のまちづくり+道路デザイン、
②長期のまちづくり、に分けて、将来ビジョンを作成していくことになるかと思います。
短期ビジョンは、車道幅員構成、舗装デザイン、灯り(照明)、地上機器の修景、
民有地の使い方とデザインコードなどが主題となり、
長期ビジョンは、自動車の時間帯通行規制をふまえた道路空間活用のあり方、
道路空間を活用した地域連携まちづくりのあり方、
活用を支えるエリアマネジメントとそのプロセスなどが主題となります。
三条の皆さんが中心で検討を進められますが、専門家チームも支援をしていきたいと考えています。
京都みちづくりを考える
このワークショップは、京都の道のあり方を問い直す機会になったのではと考えています。
京都市内では、歩道のない道が多く、そうした道のあり方が課題になっています。
自動車のための空間となってしまっている道には、市民が使いこなす余地はないのでしょうか。
そこには「公共空間は誰のものか」という問いがあります。たとえば明治以前の木戸があった時代、もしくは祇園祭の道の使い方を思い起してみると、あのような道の豊かな使い方がありました。これらがもともとの京の道の姿ではなかったか。これから取り戻していかなければならないのでは、と思います。
これからの都市空間、とくに都心の道路空間は、劇的に変わります。海外ではそのシフトは始まっており、大きな都市空間の変化が生まれています。道が車に占められているという、いまの状況は当たり前ではなかった、ということが、20年後には誰もが分かると思います。今それを考えようとすると、常識を疑い、頭を柔らかくする必要があります。
道が変わるとまちは変わります。道を変えれば、まちは格段に魅力的になります。どんな魅力が生まれるか。目をつぶって、どれくらいイメージできるか。ふっと湧いては消えていくようなイメージを形にすることが重要です。
そうやってはじめて、ビジョンは、実現へ向けて動きはじめます。
これから、協議会を中心にビジョンづくりが進められますが、今後のとりまとめがとても楽しみです。