計画論と研究 その2
(つづき)
われわれ大学の計画系分野にいる人間(学生も含む)は、
研究やケーススタディ(型研究)に没頭するだけでなく、
時代を切り開く、新たな地域づくりの「計画論」を提示しなければならない、という使命がある。
しかもその計画論の適用可能性を研究によって示さなければならない。
特にこの激動の時代。産業基盤とライフスタイルの変化、ニーズの変化が激しく
どの方向に進んでいいか見えにくいときにはなおさら、その仕事が求められるだろう。
で、世の中をあちこち見渡していると、地域づくりの「新しい計画論」として提示され始めてい
るものの形は、大きな流れとしては、以下のようなものではないかな、と考える。
ビジョン構築
→構築したビジョンを走らせるための課題設定。
→課題設定による計画論・マネージメント理論の構築。
→実践。ルール作りや制度運用(時には制度設計も)など。
そして各段階において、方法論を構築する必要がある。
たとえば「ビジョン構築」においては、誰が(主体)、どのように、どういった内容のビジョンを
どうやってつくるか、さらにそれは全体計画へどういう役割を果たすか、を理論的にかつ
実践的に明らかにしていかなければならない。
以上は大きな話。総論。
各論として、「歴史を活かしたまちづくり」も結局、この「ビジョン」の示し方と課題設定の仕方
に現れてくる、と考える。
一方で、「歴史」を軸にする場合、マネージメントやルール作りは比較的やり易そうだ。
住民が歴史に「誇り」をもっていれば、住民自らから「まとめる力」や「動かす力」が生まれる。
また、規範的なものも、過去との連続性の中で考えればよい。
課題設定さえしっかりできれば、あとは「議論を通じた対話」と、「合意形成」ができれば
プログラムは走っていくだろう。
というわけで、最も大きな課題は、
その地域にしかできない、かつ、その地域にふさわしい「ビジョン」をつくりあげることだ。
なぜ「その地域にしかできない」ことが望ましいか。
誇りをもつこと、アイデンティティの認識こそが、まちづくりの原動力だから。
そして、そのアイデンティティの認識は、周りにはない(と信じられる)強みを、
住民自ら自覚できることで強化されるからだ。
「なんとかしなければ」という消極的な発想だけでは、やっぱりしんどい。
しっかりとした「将来像」ができれば、それを実現するためのプログラムのなかに、質の高い
空間の計画・デザインをいかに組み込むか、また、そこに専門家のエスプリをいかに組み
入れるか、というところがミソであったりする。
「町並み修景」や「歴史景観復元」とは少し違った、新しい「歴史資源の活用手法」のあり方を
示すのが、腕の見せ所だ。
私はそこで、「物語の可視化」、「暮らしの可視化」、「コミュニケーションの可視化」などを
踏まえたイメージによる修景や、景観をツールにしたコミュニケーションづくり、
という、新しい景観デザインの手法を模索している。
そして、現在関わっている地域で実践したいと考えている。
新しいことを実践できれば、研究にもなろう。
しばらくは、やってみながら考えてみようと思う。